汀雲様からいただいた、シグルドとシュエラのイラストですw




<<「おめかし」  目次  「ガールズトーク」>>

 

 今日こそは忘れずに言っておかなければ。
 シグルドは心の中で繰り返し、寝室の扉を開いた。
 寝室を同じくして一週間と半ば、いつもシュエラの方が先に寝室に入っている。
 シュエラはこの日、部屋の隅に置かれたソファに座り、何故かシグルドの訪れに驚いたかのようにしゃきっと姿勢を正した。
「あ……その、本日もお疲れ様でございました」
 立ち上がろうとするシュエラに手のひらを向けて止め、シグルドはシュエラの隣に座る。
「ちょっと話がある」
 改まって言うと、シュエラはさっと顔色を変える。不安そうな目をするので、シグルドは慌てて言い直した。
「いや、そんなに大した話じゃないんだ。ちょっと教えておきたいことがあって」
 シュエラは見るからにほっとして表情をゆるめ、小首をかしげて尋ねてくる。
「何でございましょう?」

 一時期は距離を取られているようで寂しくもあったこの言葉遣いだが、そのうち気にならなくなった。
距離感とは言葉遣いによって作られるものではない。その言葉を発する際の声音、抑揚、表情、しぐさ、そして言葉に込められた思いの方が重要なのだと気付いたからだ。

 シュエラの、シグルドの言動に一喜一憂する様子や、子どものような無防備さで小首をかしげる仕草などは、何度見てもシグルドの胸を高鳴らせる。
 シグルドは頬が赤らんでくるのを感じながら、それを散らすようにわざと咳払いをした。
「あー……その、だな。おまえは侍女たちにいろんな話をしてやしないか?」
「話、ですか?」
「全部とは言わないだろうが、ヘリオットやケヴィンにまで筒抜けになっているぞ。特に閨のこととかがだな」
「えぇっ!?」
 シュエラは飛び上がるように驚き、かーっと顔を真っ赤にする。
「な、何をお聞きになったんですか!?」
 慌てふためく様子を面白く、またいとおしく思いながら、シグルドは言った。
「そういうおまえは何をどう話したんだ?」
「……」
 シュエラは更に真っ赤になってうつむいてしまう。
 こういう反応になるほどの話の中身が、正直気になったけれど、あんまりいじめて機嫌を損ねてもどうかと思い、シグルドはシュエラの肩を抱き寄せ言った。
「それがあいつらの仕事でもあるからな。ま、恥ずかしい思いをしたくなかったら、話す内容に注意することだ」
 波打つ栗色の毛先をシュエラの目の前でもてあそんでいると、シュエラは腕の中でくすぐったそうに身をよじらせる。
 何やら困ったようなその様子をかわいく思い、シグルドは引き寄せられるように唇を寄せた。

 唇と唇が重なり合う。

 キスだけはシュエラも逃げない。シグルドは一層抱き寄せ、あごをとらえて、狂おしいくらいに甘いそれを堪能した。
 こうして触れ合えば、その先もやはり欲しくなる。
 シグルドは唇を離し、肩で息をするシュエラを抱き上げた。
「きゃ……っ!」
 シュエラから小さな悲鳴がもれる。シグルドはそれに構わず、ベッドに向かった。

 ベッドに降ろして覆いかぶさり、再びキスをする。
 こういう流れでもっていけば、さすがにいつものような逃げ方はされないだろう。
 今日は多少強引にいく。
 そう心に決めて、頬をなでる手を首筋から胸元へと降ろしていく。
 シュエラの体がびくっとはねた。
唇を頬から耳元にうつしていくと、シュエラは慌てて声を上げる。
「ま、待ってください!」
 シグルドは唇を離し、シュエラの顔をのぞきこんだ。
「今日はやめない。……俺が何をしたいと思っているのか、わかっているのだろう?」
 シュエラは赤い顔を更に赤くして、シグルドから目をそらしながら言った。
「あ、あとをつけないでほしいんです! 着替えの時にみんなに見られるのがは、恥ずかしくて……」
「わかった。じゃああとをつけなければいいんだな?」
「……」
 シュエラは目をそらしたまま答えない。
 シグルドはそれを承諾ととって、再び首筋に顔を埋めた。
「愛している、シュエラ……」
 シグルドのつぶやきは、シュエラの耳元に吸い込まれていった。


 翌朝、ほぼ同時に目を覚ました。
「おはよう。シュエラ」
「おはようございます。シグルド様」
 起き上がっても離れがたく、そろそろベッドから抜け出さなければならないのに、シュエラを抱き寄せてしまう。
「愛している、シュエラ。おまえは?」
「わたくしも愛しています。シグルド様……」
 シュエラは恥じらいながら答えた。


 その日の午後、ヘリオットがにやにやしながら近付いてきた。
「よかったですねー」
 何のことか、聞かずともわかる。
 シグルドはじろっとにらみつけた。
「何が“ここはゆっくりと愛をはぐくんでいかれた方がよろしいのでは”だ。シュエラはちゃんと応えてくれたぞ?」
 そもそもちょっとした勘違いだったのだ。
 ──どのように応えたらいいのか、わからなかったのです。差し支えなければ、シグルド様が教えてくださいませ。
 ……………………………聞かなければわからないことがまだまだあるということだ。うん。
 ムカつきも込めてにらみつけてやると、ヘリオットはしれっと答えた。
「まあ、女性は花のつぼみにも例えられるように、固く閉ざしていてもほころびはじめればあっという間に開花するものですからね」
 適当なことばかり……。
 シグルドはヘリオットのこの手の話は、話し半分に聞いておこうと心に決めるのだった。

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